借地非訟の介入権とは
借地非訟事案などでよく耳にする介入権とはなにか?
解説いたします。
目次
借地介入権=地主が借地非訟に介入権の行使
リビルダー
借地介入権とは、地主が借地非訟手続きに介入権の行使、つまり、借地権付きの建物を優先的に買取ることができる先買いの権利を意味します。
民法612条1項により、借地権者は地主・底地人の承諾がなければ、借地権を譲渡することができません。
なぜなら、地主は借地契約をした相手を信頼して、土地を貸し、自分の土地上に建物を建設することを条件に貸し地したからです。
初期契約時の借地人が賃料支払能力があると信用したから貸地契約を結んだわけです。
その信用できる人物から全く信用できない人に、借地権が売り渡されたら、地主の土地所有権にもとづく地代収入が、新しい借地人が未払いをすることで脅かされ、経済損失を被る可能性があります。
借地権は土地を独占所有し、所有権の7~9割りもの価値を持つ強力な権利です。
法律はこのような地主の損害を防止するために、借地権者が自分の強力な権利を他人に譲るさいには、その譲渡で損害を受けるかもしれない地主に契約を介入する権限を与えました。
新しく権利を有することになる人間の可否を判定する機会を与え、その借地権譲渡が、もし、社会的に好ましくない用途に使用される恐れがあると思えば、契約に介在・介入し、それを拒否することができるとしました。
この民法612条2項の規定によって、地主に無断で借地上の建物売買を行なうと、その借地契約自体を解除され、借地権を失ってしまう危険があります。
よって、借地権を譲渡するには、地主・底地人の承諾が必要になるんです。
しかし、逆に借地権者に事情があって権利を売却したいのに、常に地主に介入・干渉され、権利移動ができないのは困ります。
そこで、頑固な地主に代わって裁判所が借地権売却を承諾することができるという制度が用意されました。この借地非訟にまで地主が介入するには、地主の側に借地介入権がなければなりません。
借地介入権を行使するには、地主自身がその建物を買取る等、その売買に介入して阻止することで、借地権者の売却による利益を損なわせない準備があることが必要です。
地主が自分で建物買取をする用意があるのなら、借地介入権を行使する条件が整ったことになります。
これにより、地主は介入権の行使、つまり、借地権付きの建物を優先的に先買いすることができます。
借地建物の買い取りにより、自ら借地人・兼・底地人になったことで地主は★借地権消滅を可能にできます。
借地介入権についてわかりやすく解説しています。
世間一般で使われている介入権との違いや、その権利行使の方法まで説明しているため、参考になります。
地主の方以外でも概念を学ぶためにはわかりやすいつくりになっているので、一読ください。
借地非訟事件とは?手続きや介入権についても解説します。
不動産実務TIPS
借地権非訟事件のうち、「土地の賃借権譲渡又は転貸の許可申立事件」と「競売又は公売に伴う土地賃借権譲受許可申立事件」に関しては、土地所有者が自ら土地の賃借権を借地上の建物と一緒に優先的に買い取る権利が与えられています。
この権利を介入権といいます。
介入権は、借地権の買い取りについて、地主が最優先に買取の権利を有する制度です。地主の権利という点はポイントです。
介入権行使の具体例
介入権が実際行使される典型的な例は、「借地権の評価額が、地主が考えていた価額よりも低い場合」です。
借地権売却や競売手続きにおいて、第三者に借地権売却を承諾するぐらいならば、自分が買い取ってしまいたいと考えるケースがあります。
特に、地主が思っていた金額よりも借地権の評価額が安かった場合は当然そのように考えますよね。借地関係を解消でき、完全な所有権を取得することができます。
借地権の評価額が低い場合、借地権の譲渡承諾料も連動して安くなることになります。借地権が第三者に売却されるときの地主のメリットは譲渡承諾料になりますので、譲渡承諾料が安くなるのならば(加えて借地権を買い取る価格が安いならば)、自分で借地権を買い取りたいというインセンティブが働くことになります。
これを認めるのが介入権です。
借地非訟事件で出てくる介入権とは何かを解説しています。
地主さんが優先的に買取の権利を保有することができます。
具体例もあるので非常にわかりやすいです。
借地非訟事件,介入権~裁判所が介入してそこに地主が介入?~
みずほ中央法律事務所
どのような場合に「介入権」が使われるのでしょうか。
→評価額が判明して,地主の予想よりも低い場合が典型例です。
一般の借地権売却や競売において,地主が「第三者に売るのを承諾するくらいならば自分自身が買い取りたい」と考えることがあります。
勿論,裁判が始まる前の交渉段階で,スムーズに話が進めば自然と地主が借地権を買い取る(買い戻す)ことになったはずです。
しかし,一般的には,地主が借地権を買い取る場合でも,金額で折り合いがつかない場合があります。
その結果として,借地人としては,第三者に売却した方が高く売れる,という流れになることがあるのです。
まさにこのような状態で地主・借地人間で協議が決裂した場合が,譲渡許可の申立に至る典型例です。
譲渡許可の非訟事件手続きの中では,主に承諾料の金額を定めることが主要な作業となります。
その大前提として,借地の評価額が重要です。
審理としては,借地の評価を進めます。
その中で,借地の評価がある程度低く出た場合,地主としては,「承諾料をもらうよりは自分で買い取った方が良い」と考えることもあります。
その場合,地主は最優先で「買い取る」ことができるのです。
この「介入権」ですが,裁判所の取扱としては,1つの「申立」として扱います。
形式的には1つの「手続き(事件)」とされます。
実質的には,譲渡承諾の申立(非訟手続き)の一環となっています
どういったケースで介入権が使われるか説明しています。
典型的な例をもとに解説しているため読みやすいです。
判例!
不動産適正取引推進機構
Xは、平成15年4月および7月に前所有者から借地権付建物(以下「本件建物」という。)が存在する土地(以下「本件土地」という。)の所有権を取得し、賃貸人の地位を承継した。
その際、Xは、本件建物が平成14年6月に強制競売開始決定がされていたため、執行裁判所に対して、本件建物が競売された場合には、競落人に対して賃借権の譲渡承諾を拒否することや、競落人が借地非訟手続を申し立てた場合には先買権(介入権。借地借家法20条2項、19条3項)を行使することを表明していた。Yは、平成15年10月29日、本件競売手続によって本件建物を買い受けたが、代金納付期日から2ヵ月以内に土地賃借権譲渡許可の申立てをしなかった。
そこで、Xは、Yに対し、本件建物の賃借権譲渡を承諾していないから、無断賃借権譲渡を理由に民法612条2項により賃貸借契約を解除した上、本件土地の所有権に基づき、本件建物の収去と本件土地の明渡し等を求めた。
これに対し、Yは、XY間の信頼関係は未だ破壊されていないからYの賃借権はXに対
抗できる、Xの請求は権利の濫用であるなどと主張し、原審が、Xの請求を認容したので控訴した。
こちら平成17年に実際に起きた判例をまとめたものになります。
詳しい学説や、裁判所判断に言及しているため、難易度は高いですが、納得できる内容になっています。