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借地非訟の裁判例について

借地非訟について、実際に起きた問題に対する判例も集めました。どういった場合にどのような判決が出るか知っておくことが重要です!

目次

最近の解決事例紹介
借地非訟事件の四つの分野
申立てに必要な費用
重要判例解説

最近の解決事例紹介

神田元経営法律事務所

参考:神田元経営法律事務所

この度、A市に所在する借地に関する非訟事件について、裁判所で和解が成立し解決しました。依頼者は、A市にて、地主から土地を賃借し、その土地上に建物を建てて居住してきたのですが、種々の理由から当該借地権を第三者に売却しようと決断して、地主と交渉をしたのですが、全く同意が得られず、そこで当事務所に相談に来られたというものです。

 借地というものは、地主との間に借地契約を締結しますが、民法上、地主の同意なく、勝手に第三者に借地権を譲渡することはできません。借地契約は、あくまで、地主と借地権者との間の二当事者間契約であり、地主は借地権者との人的信頼関係に基づいて契約し、契約を維持するものですから、ある日突然全く知らない第三者が借地人として入ってきても、地主としては困ってしまうからです。また、借地上の建物が古くなってきたからといって、借地権者は、地主の同意なく、建物を建て替えることもできません。借地契約というのは、建物が存在していることが、更新など借地契約を継続させていくための条件となっていますので、地主の同意なく建物を建て替えることができるとすると、事実上半永久に借地契約が存続されてしまうことにもなりかねないからです。
 しかしながら、借地権の譲渡や、建物の再築について、地主にとって不利益にならないケースにおいても、地主が同意を出さないとすると、反対に借地権者としては、投下資本の回収ができないことにもなりかねず、これも借地権者の負担となる可能性があります。そこで、借地借家法においては、借地権譲渡や、借地上の建物再築について、地主が不利になる事情もないのに、それらを拒絶する場合には、裁判所が当該地主に代わって、借地権者に対して許可を出すことが規定されています。これを裁判所の代諾許可といいます。

 今回の事件においても、依頼者から相談を受け、借地権の譲渡、および建物の再築許可を出したとしても、特段地主にとって不利益となる事情は見当たらないと判断しました。そして、すでに依頼者と先方との任意交渉では、同意が得られていませんでしたし、交渉しても当方に有利な条件を見つけるのが困難と判断し、A市を管轄する地方裁判所に、借地権譲渡及び建物の再築についての代諾許可を申し立てしました。この申立ては、通常の「訴訟」ではなく、「非訟」事件という取扱いになります。
 非訟というのは、文字通り“訴訟に非ず”というそのままの意味であり、例えば、甲さんが乙さんに金を貸したので返してくださいという訴訟事件であれば、両者の権利義務、そもそもそんな貸金の事実があったのでしょうかということをまず確定させることになるわけですが、一方、非訟事件というのは、両者間の関係については、既に権利義務の関係については存在を認めたうえで、それでも両者の話し合いで解決が図れない事項、例えば、借地権譲渡についての同意料、借地上の建物の再築についての同意料などについては、裁判所で後見的に判断してあげましょうということで、権利義務を争わない以上「非訟事件」というくくりになるのです。
 本件の場合においても、借地権譲渡の同意の代諾許可、および借地上の建物の再築同意の代諾許可について、裁判所に申し立てをしましたが、その申し立ての際は、借地権譲渡同意料、および建物再築同意料をそれぞれ具体的な金額を付して提出しました。もちろん、法的に決められたものではありませんが、不動産取引慣行では、借地権譲渡の同意料は、借地権価格の約10パーセント、建物再築同意料は、更地価格の2から5パーセントとしているようで、今回の申立書においても、その数字を記載したものです。両同意料については、最終的に両者の合意が得られなければ、裁判所が、解決金名目で金額を決めて決定(裁判ではなく非訟ですので、判決ではなく、「決定」となります。)をすることになります。
 今回の事件については、申立後、裁判所から、両同意料について何らかの金額が“解決金”として、提示されるかと思っていましたら、早い段階で、先方、すなわち地主側から、依頼者所有の借地権を引き取りたいという案が出てきました。当方の依頼者としても、当該借地権を第三者に譲渡するのか、借地権の買戻しで投下資本を回収するのか、いずれにしても借地権者にとってみれば同じ効果が得られるのであれば、方法にこだわらないということで、その段階から、借地権の価格評価が争点となっていったというものです。借地権評価について、両者の主張が真っ向からぶつかり、全くギャップを埋めきれないというケースであれば、裁判所の選任する鑑定人(通常、不動産訴訟であれば不動産鑑定士)が鑑定をし、その鑑定額によって和解においても、決定においても解決金額が決まってくるのですが、今回は、裁判所鑑定は行わず、裁判所から和解案として金額が提示され、地主から、借地権者である依頼者に一定の金額を支払うことと引き換えに借地契約を合意解除する、すなわち借地権を買い戻すという内容で和解が成立しました。
 このように借地非訟事件では、当初の申立が借地権譲渡についての代諾許可などであったとしても、解決として借地権の買い取りとか、底地権の買い取りというように、借地関係を解消するような解決に至ることもありますので、色々な選択肢を分析しておくことが重要といえます。

実際の法律事務所が、借地非訟について、和解が成立した事例の解説になっております。
申立てなども詳しく解説しているため、参考になります。

借地非訟事件の四つの分野

弁護士のKnowとHow(ノウとハウ)

参考:弁護士のKnowとHow(ノウとハウ)

借地非訟事件とは、借地について、建物の建替えや売却について裁判所の許可を受ける手続きです。

 かなり前の数字では全国で1800件、そのうち最後の決定まで行くのが1割、残りの9割は和解や調停成立になっていました。
 裁判所までいかない段階の借地に関する問題も少なくないと思います。
 非訟事件は非公開。決定に対する上訴は2週間以内の特別抗告となります。高裁でも非公開の非訟事件で、判決でなく決定になります。
 和解や調停で金額ががまとまらないときは、裁判所がえらんだ弁護士・不動産鑑定士・学識経験者でつくる委員会が土地の評価をして承諾料や地代の額についての意見を裁判所に出します。この費用は裁判所負担です。

 借地非訟で最も多いのは①「建物再築の承諾許可請求」。借地契約の中にほとんど「貸主の承諾なく建物の改築や建替え(たてかえ)をすることができない。」という条項があります。それで承諾が得られないときに裁判所に建替え許可を申し立てる(必ず事前に=これは最重要です)。申立書はインターネットに裁判所の書式が載せられています。そこに書き込むことで大体はできます。借地の図面については「公図に手書きで書いたようなものでも結構」ということになっているので借地の測量図は不要です。
 この建替え承諾料は都会地では土地評価額の3~4%くらいが標準です。地方では地価が安い分、この%は上がります。

         弁護士のKnowとHow(ノウとハウ)の記


 次に、② 建物再築の中でも、木造から鉄骨やコンクリート造りにするようなときには「借地条件の変更許可」という非訟事件になります。鉄筋のような建物の許可を得るための条件は近隣で鉄筋などの建物が多くなりつつあるときというような条件があります。
 条件変更の貸主への承諾料は、土地評価額の1割になっています(都会地では)。その後の契約期間は30年に変更されます。
 借地権を第三者に売りたい場合は、③「譲渡承諾の許可請求」。借地借家法では「貸主に不利となおそれがない」ときに譲渡を許可することになっています。貸主の買い取り請求があったときを除いて原則的に許可になります。借地権の買取り希望者に経済状態の不安があるなどの具体的な心配があるときが「おそれがある」という場合ですが、具体的なおそれが必要です。
 貸主に支払う譲渡承諾料は「借地権の1割」が多い。借地権割合が7割のときは承諾料はその1割なので、承諾料は土地価格の7%になります。

 ②の条件変更承諾料には③の建替えの承諾料を含んでいるので、同時に申立てれば承諾料の二重払いは不要です。
 最後に、④ 借地権付き建物を「不動産競売で競落(けいらく)した人が承諾許可を求める請求」。貸主にとって「不利となるおそれがない」ときに譲渡を許可することや「承諾料が借地権の1割」になること、さらに「建替え承諾や条件変更承諾の申立てが一緒にできる」ことも③と同じです。
 上記の③、④で新借主への譲渡を求められたときに、土地の「貸主は借地権の買取り請求をすることができる」。この申し立ては原則的に認められ、貸主が優先的に取得できます。 
 買取り金額は、借地権の評価額から貸主の譲渡承諾料にあたる1割を引いた額になっています。これを決定で決められた期間内に払うと土地の貸主が借地権を取得できます。

 以上①~④のすべてで、契約期間が変更されます(20年または30年に)。賃料も変更されることが通常です。

そもそも借地非訟にはどいったケースがあるのかを弁護士が解説しています。実務に携わる弁護士が、ケース別に解説をしています。判例などを見る前の入門編として勉強になります!

申立てに必要な費用

裁判所

参考:裁判所

申立てに必要な費用
(1) 申立手数料

借地非訟事件の申立てには,申立手数料の納付が必要です(民事訴訟費用等に関する法律3条1項,別表第一13項及び同項の2)。
申立手数料は,借地権が設定された土地の価格を基礎として算定されます(なお,手数料の算定に当たっては,いわゆる固定資産税評価額のある土地については,その価格を基準とします。)。
申立手数料は,申立時に,収入印紙で納付する必要があります(民事訴訟費用等に関する法律8条)。
ただし,手数料額の計算間違いを避けるため,受付窓口で点検する必要上,収入印紙は申立書に貼らずに来庁してください。手数料額を計算することが難しい場合には,収入印紙を購入せずに来庁してください(裁判所の建物内に郵便局がありますので,当日購入できます。)。
(2) 手数料算定に必要な書面

申立時には,手数料額を確認しますので,借地の土地固定資産評価証明書(原本)を必ず持参してください。
(3) 申立手数料額の算定方法

 以下の計算式により,目的物の価格を算出してください。目的物の価格に応じて,裁判所に納める印紙額が決まります。必要な印紙額は,次のページに表がありますので,おおよその目安にしてください。
 なお,借地の土地固定資産評価証明書に,登記地積と現況地積との両方が記載してある場合には,現況地積を計算の基礎とします。

ア 増改築許可申立事件の申立ての場合(借地条件変更と同時に申し立てる場合はイ参照) 
借地の範囲が当該土地の全部のとき
固定資産評価額÷10×3÷2
借地の範囲が当該土地のうちの一部のとき
一部の土地の面積÷全体の土地の面積・・・(a)
固定資産評価額×(a)÷10×3÷2

イ 増改築許可申立事件以外の申立ての場合(借地条件変更と増改築許可を同時に申し立てる場合も含みます。)
借地の範囲が当該土地の全部のとき
固定資産評価額÷2
借地の範囲が当該土地のうちの一部のとき
固定資産評価額×(a)÷2

こちらは借地非訟を申し立てる際に必要な費用を裁判所が明示しています。こちらかかる費用の計算に必要なので、見ておくことをお勧めいたします。

重要判例解説

泉総合法律事務所

参考:泉総合法律事務所

借地借家法19条は,その1項において,土地賃借人(以下「借地人」という)が借地上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において,第三者が賃借権を取得しまたは転借しても借地権設定者(以下「地主」という)に不利となるおそれがないにもかかわらず,地主が賃借権の譲渡・転貸を承諾しないときは,借地人の申立てにより,地主の承諾に代わる許可の裁判をすることができるとするが,その3項において,この申立てがあった場合において,裁判所の定める期間内に地主が自ら建物の譲渡および賃借権の譲渡・転貸を受ける旨の申立てをしたときは,1項の規定にかかわらず,裁判所は,相当の対価および転貸の条件を定めて,これを命ずることができるとして,地主に優先譲受申立てを認めている。地主の優先譲受申立ての制度は,地主にとっては,土地所有権の完全性を取り戻すための手段であり,借地人にとっては,借地人の投下資本の回収方法の1つとして機能する。また,この3項の規定は,借地上の建物を競売または公売により第三者が買い受け,買受人が地主の承諾に代わる許可の裁判(借地借家20条1項)を求めたときにも,準用されている(同条2項)。
借地上の建物が,複数の借地上にまたがっている場合や借地と借地権者の所有地とにまたがって建築されている場合において,またがり建物全体を対象とした優先譲受けの申立てをすることが許されるかについては,下級審裁判例や学説の見解が分かれていた。
すなわち,①借地上に建物の大部分が存在するまたがり建物につき,当該建物全部を借地権設定者に譲渡するよう命じた上で,借地権設定者に対し,借地上に存在する部分以外の建物の除去を命じ,他方,借地上に建物の約5分の1しか存在しないまたがり建物につき,借地上に存在する部分のみを借地権設定者に譲渡するよう命じた上で,借地権設定者に対し,借地上に存在する部分とその余の部分とを構造上区分し,区分所有権の客体たるに適した状態にすべきことを命じた裁判例(横浜地決昭44.8.22下民20巻7=8号594頁),②またがり建物の場合でも,借地権者は建物一棟全部を譲渡の客体とするほかなく,その建物一棟全部の交換価値の実現を図ろうとしている以上,借地権設定者をして建物一棟全部の対価を支払ってこれを買受けさせるのが,双方の利害調整の観点から公平かつ妥当であって,借地法9条ノ2第3項(借地借家法19条3項に相当する規定)の趣旨に合致し相当であるなどとして,優先譲受けの申立てを認める見解(東京高決昭46.3.23下民22巻3=4号280頁),③原則として,優先譲受けの申立ては認められず,隣地の所有者が優先譲受けの申立てを承諾しているような場合に例外的に認められるとする見解(大阪地決昭44.7.14下民20巻7=8号484頁)などが見られ,借地非訟の裁判実務上は,③の見解が有力であった。
本件は,本件隣接土地の所有者ZがXへの借地権譲渡を承諾している事案であって,本決定のように,Yに不利益を与えるおそれがなければ,Xに承諾に代わる許可を与え,Yの優先譲受申立てを拒否するのが適切な事案であった。本件隣接土地の所有者ZもXへの借地権譲渡を承諾していなかった場合は,XはZとYとを相手方として承諾に代わる許可の裁判を求めることになるが,ZとYが共同して優先譲受けの申立てをすれば,ZとYとが建物およびそれぞれの賃借権を買い受けることになる(建物は,それぞれの土地上に存在する建物部分の面積に比例した共有となる)。本件とは逆に,ZがYに本件隣接土地上の賃借権の設定について承諾を与えていたときは,XのZとYとを相手方とする承諾に代わる許可の裁判の申立てに対して,ZとYとが共同して優先譲受けの申立てをし,ZとYとが建物およびそれぞれの賃借権を買い受け,その後,AZが支払った代金をYがZに支払うことによって,Yが建物所有権全部を取得し,敷地の一部(本件隣接土地)をZから賃借するという形で決着が図られよう。
結局,競売または譲渡により第三者が取得する借地人の建物が,所有者を異にする複数の土地にまたがって存在し,一方の土地については土地利用権(土地賃借権の譲渡につき地主の承諾または法定地上権の成立)に基づいて建物の存続が認められるが,他方の土地については,地主Yが土地賃借権の譲渡を承諾せず,優先譲受けを主張する場合,建物買受人または借地人の申立てにかかる承諾に代わる許可の裁判を優先させるべきか,地主の優先譲受けおよび賃借権の譲渡または設定もしくは法定地上権の取得の許可を認めるべきか,ということになる。後者を認めても,建物取得者が隣地の所有者に変わるだけであるから,建物所有者にとって特に不利になるわけではないともいえる。しかし,本決定は,本件各決定は,裁判所は,法律上,賃借権及びその目的である土地上の建物を借地権設定者へ譲渡することを命ずる権限を付与されているが,賃借権の目的外の土地上の建物部分やその敷地の利用権を譲渡することを命ずる権限など,それ以外の権限は付与されていないので,賃借権の目的である土地と他の土地とにまたがって建築されている建物についてされた優先譲受け申立ては,裁判所に権限のない事項を命ずることを求めるものといわざるを得ないから不適法であるとして,これを却下した。
なお,優先譲受け申立てが認められないことにより借地権設定者が不当な不利益を被る場合には,賃借権譲渡(譲受)許可の裁判をする際に,付随処分において,財産上の給付額を高額に決めたり,かかる不利益が存在することを「その他一切の事情」として考慮し,賃借権譲渡(譲受)許可の申立てそのものを棄却することによって,その不利益を除去することも考えられよう。

こちらは最高裁判所第三小法廷で平成19年12月4日にだした重要な判例について、弁護士さんが解説をしております。法律における学説や、下級裁判所でも判例が割れているため、重要な裁判例として取り扱っています。
少々難しいですが、詳しく勉強したい方にお勧めです。

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